第3章 庭づくりと栽培: バラのアーバー


第3章 庭づくりと栽培 Construction and Cultivation 


ఔ バラのアーバー THE ROSE ARBOUR ఔ



 庭の他のものと同じように、バラのアーバー(ドーム型アーチ)もその魅力と有用性があって初めて存在しうるのです。勝利の旗をひるがえすように、見事にテストは合格です。

 新しい庭では、バラのアーバーは即座に高さを提供することにより最初からインパクトを与えます。植物がまだおおっていないときでも目を惹きつけるようにデザインされていますが、数ヶ月の後には高いところに葉や花の色を伴ってくるでしょう。

 ベンチを置けば、春から夏に腰掛ける素敵な場所になるでしょう。青々とした葉や甘く香る花々、そしてそれらが惹きつける無数の昆虫のブンブンという羽音は、ここをひと時の完璧な安らぎの場所にするでしょう。しかしこの装飾的菜園ではそれだけではまだ十分ではありません。

 すなわち、純粋に装飾的な植物の支えとなるだけでなく、ここのアーバーは果樹や野菜がまきついて登る骨組みとしても用いられるのです。そしてあなたはそれがとても魅力的に見えることに驚くでしょう。

 たとえばペポカボチャは地面にはわせて栽培すると、何度も見てみたいとは思いません。その実は大きな葉に隠されていて、早くから汚れてきて泥にまみれたりするからです。しかし、垂直にはい上がるように育てると、明るい緑や黄色や派手なストライプの皮が、明るくビーチパラソルのように華やかに葉の間から光り輝くのです。そしてさらに、貪欲なナメクジの襲撃も受けにくくて安全で、実は汚れず乾燥しているためカビの問題からも逃れられるのです。

 あなたがもっとバッカス祭のような享楽を求めているのなら、天気の良い秋の午後にクッションつきのベンチに体を伸ばして、すぐ横に実るブドウの房から直接ブドウの粒を摘み取って口にもっていくこともできるでしょう。他にもいろいろな楽しみ方がきっとあります。





アーバーをつくるにあたっては、最初にちょっとした仕事があります。

 アーバーの下の地面は、レンガの園路に使ったレンガを八角形に敷きます。私の庭ではアーバーはレンガの園路の終点に設置しましたが、これだけを独立して設置してもよいと思います。

 まず、直径120cmの円を描きます。描くときに使った木釘と糸はあとで使いますからそのまま残しておきます。断面が7.5×2.5cmで長さが90cmの板を8本用意し、これらを木釘を使ってレンガの園路の項(p.54)で説明した方法で固定します。レンガを砂の上に敷きますが、今回は園路と違ってレンガを切る必要があります。レンガを切るのにはレンガ用のタガネとハンマーを使えばむずかしくはありません。

 レンガの1列目を縁取りに沿って並べ、中央の木釘から縁取りの木の端っこへ糸を張ると、レンガをカットする場所がわかります。この方法でそれぞれの縁取りの角に糸を張り、レンガをカットする場所を容易に知ることができます。

 すべてのレンガを敷き終えると、中央から8本の線が伸びるレンガの八角形ができ上がります。それはとても魅力的に見えますが、中央の八角形の穴の部分を仕上げなくてはなりません。ここを埋める良いアイデアをビクトリア朝の建築家であるエドウィン・ルチェンスから拝借しました。ガートルード・ジェキルと協力して庭をデザインしたソマセットのヘスターコーム・ハウスで私はそのアイデアを見つけました。

 少しずつ違うサイズの素焼きの鉢を探し回る必要がありますが、大きいのは直径15cmぐらいから、一番小さい4cmぐらいのものまでちょうどそれぞれが中に納まるぐらいのサイズをそろえます。それぞれの鉢の間に砂をいれて仕上げると、同心円状の魅力的な模様になります(第1章のビクトリア時代の庭園の項を参照、p.20)。舗装した基礎ができたら次はアーバーの支柱の位置に印をつけます。時間の節約とトラブルをさけるために、地中に打ち込む特殊な金属製のスパイクに支柱は固定することもできます。八角形のそれぞれの角のところにそれぞれスパイクを打ち込みます。

 本当のことを言うと、このスパイクはフェンスの支柱には私は好んでは用いません(このスパイクはフェンス用につくられていますが)。というのは、風の抵抗が強いとフェンスの支柱がゆるみやすいからです。しかし風の通りやすい構造のローズ・アーバーにはこのスパイクは理想的でしょう。

 スパイクの底が舗装と同じ高さになるまで打ち込んでから、スパイクの中に長さ2mの支柱を差し込みます。水準器を使って支柱の高さをそれぞれ水平にします。





 屋根をつくる梁は断面が7.5×4cmの木材でつくり、同じ太さの木材でつくった横木に固定します。木材を購入する際は、防腐剤処理したものを求めるのが良いと思います。木材を扱っているお店にはたいていあると思います。少し値段は高いですが、腐ることなくずっと長持ちします。もしお金を節約したいなら、解体業者から中古の床用の根太を買ってください。ふつう7.5×5cmの太さで、しっかりした仕事になります。

 横木は90cmの長さにカットして支柱に六角ネジで固定します。支柱より2.5cm高くして、屋根の梁を固定できるようにしておきます。

 梁は中央になる端を10度の角度に切って、屋根がスロープになるようにし、それぞれがロックしてぐらつかない役割も果たします。理想的には大工さんが使う斜角規を使って角度の目印をつけて切るのがよいのですが、なければ学校の普通の分度器でもよいでしょう。

 もう一方の端の方には切込みを入れて、横木の上に合わせて釘で固定します。

 最初の2本の梁を乗せたら、中央で金属製の板を使って2本の梁を固定します。ホームセンターで金属製の板は購入できますが、ココア缶のブリキを切って使ってもよいでしょう。その際は、錆びないようにペンキを塗って下さい。固定にはそれぞれの梁に2本のネジを使い、誰かに梁をもってもらってネジ止めして下さい。

 他の梁も同じ要領でこていします。4本の梁を固定したら、あとは中央にくる端の角を切り落として梁の間にフィットさせて固定します。

 木材の切断が正確になされれば、屋根の梁はお互いにロックして他に固定をしなくても安定するでしょう。しかし私は金属製の板を使って固定したほうが安心だと思いましたし、二重の安全対策のために屋外用の合板を丸く切って屋根の梁の下にネジで止めました。実に悲観的ですが、こうしておけば屋根の下でブドウを味わうときに、ずっと安心していられるでしょう。




 アーバー向きの植物の選定は第5章のつる性植物の項(p.163)をみてください。