第8章 樹木の果実: モモ

第8章 樹木の果実  TREE FRUIT



ఔ モモ  PEACHES ఔ



 モモやネクタリンはガーデナーにとっては果樹園の本当に最高のものとしてみられています。寒い地方では南向きの壁での保護が必要で決して栽培は簡単ではありません。しかし、やっぱりそれだけの苦労をしても十分育てる価値がある植物です。
 モモとネクタリンは一緒に植えていますが、それは両者があらゆる面でよく似ているからです。ネクタリンは素晴らしい味をもった毛の生えていないモモそのものです。両者は菜園ではファン仕立てが一番良いと思います。あるいは、矮性の品種をポットに植える方法もあります。そうすればモモに多いカビの病気から守れるからです。両者は早春に濃いピンクの花を咲かせます。 


モモの品種 Peach varieties



'Duke of York'

 深紅色の大きな実をつける早熟の品種で、果肉は黄色くて素晴らしい味です。

'Peregrine' 

 大きくて濃い赤色の実で、とてもジューシーで味も素晴らしく、'Duke of York'より少しあとに熟します。

'Rochester'

 耐寒性が強くて花の咲く時期が他の品種より少し遅いので、寒い地方のガーデナーに向いたよい品種ですが、遅霜には注意です。味はほかのよりは少し劣ります。



ネクタリンの品種 Nectarine varieties



'Early Rivers'

 熟したら緑色から赤くなります。果肉は黄色。すばらしい味です。

'Lord Napier'

 温かい地方向きで、しかも南向きの壁に適する品種です。味はベストです。


 矮性のモモやネクタリンの新しい品種もでてきて、鉢植えでも育てられます。私が試しているのはモモは'Garden Lady'と'Bonanza'という品種で、ネクタリンは'Nectarella'です。結構いい味の実をたくさんつけますが、たったひとつ大きな欠点があります。私の経験ではカビの病気であるモモ縮葉病にかかりやすいようです。この病気は葉に赤い火ぶくれをつくり、葉は落ちます。屋外で育てる場合は、この病気にかかるとオーガニックな庭園(薬剤散布が禁止)では使い物にならなくします。しかし、カビの芽胞は雨で運ばれるため、一月から5月まで温室で育てられるなら病気を免れるでしょう。ですから温室に冬越しするためにスペースがあるならば、ポットで育てるとよいでしょう。


台木 Rootstocks


 普通の大きさの果樹にするなら、台木は半矮性のSt Julien Aにしましょう。もし大きな壁をおおいつくしてもよいならば、もっと成長が旺盛な台木のBromptonがよいでしょう。特に小さな木が望みならPixyという台木に接いだ苗木を扱っている業者も最近はあります。


植え付け Planting


 植え付けは南向きの壁に接したところにします。複数の木を育てる場合は、間隔を3メートルはとります。植える場所の土壌改良も大切で、水はけを改良します。大きな穴を掘り、フォークで底を耕して、粗い砂を加えます。土を戻したら良質の堆肥や肥やしを混ぜ込みます。
 南向きの壁のところはパティオがつくられていることが多いので、壁に接した石板をはがして植え付ける場所を確保します。舗装用の石板の幅で土の準備をするのは大変です。石板の下のコンクリートの基礎をつくる前に植え付けるスペースを準備しておくとよい結果が得られますが、それは現実にはむずかしいですね。


剪定 Pruning


 もしモモの伝統的な剪定の方法がさっぱり理解できなくても大丈夫です。私もそうです。しかし、一つの事実を覚えておけば、モモの剪定は簡単ですから、決していやにならないでください。
 私はいつも誘引をすでにしてある苗木から始めます。ファン仕立てにするのには数年を要しますし、そうなってやっと実をつけるための剪定を始めるのです。ですから時間と手間はナーセリーの人にやってもらうのが良いでしょう。両側に3本か4本の枝を誘引してある苗木を買って、洋ナシの項で述べたように棒に枝を結べばよいのです。
 実をつけさせるための剪定の時期がきたら、実は必ず前年に伸びた枝につくということを覚えておかなくてはいけません。いったんそれを知れば、あとは簡単です。  
 最初の夏、それぞれの枝に10cmぐらいの間隔で新しい枝を出させるようにします。余計な枝はまだ軟らかいうちに擦りとります。残す枝は誘引します。また、壁に向かったり、手前に向かう枝も取り除きます。
 二年目の夏、実をつけるのは誘引したそれらの枝です。枝が10~15cmに伸びるまで待ち、枝の基部から枝が伸びてきているのを確認したら、枝の先端をピンチします。枝の基部から伸びる枝は次の年に実をつける交代のための枝ですからそのまま成長させます。実をつけた後は、実をつけた枝を切り戻し、基部からの枝を誘引し、次のプロセスがまた始まります。やることはこれで全部です。



手入れ Cultivation


 寒い春には十分気を配る必要があります。受粉する昆虫が来なければ受粉をしてやらなくてはなりません。できれば晴れた日を選んで、軟らかい絵筆の先を花につけて花粉を他の花につけるようにします。
 天気予報にも気を付けて、霜注意報がでたら洋ナシの項で述べたようにポリエチレンのシートをかけてやります。


収穫 Harvesting


 モモが色づいてきたら、実が落ちて痛まないように毎日熟しているかチェックします、そっと手のひらで実を持ち上げてひねってみます。もし簡単にとれてくるようなら熟しています。冷所では一日二日は保存できます。