第6章 ハーブ

第6章 ハーブ  HERBS




 ハーブは何世紀にも渡って病気の薬として、染料として、香水として、媚薬として、そして魔法の呪文として使われてきましたが、第一のもっとも重要な目的は料理に香りをつけることでした。そして装飾的菜園のガーデナーは、この最後の目的でハーブを育てるのが普通でしょう。

 ハーブはこのタイプの庭のボーダー花壇にぴったりの植物です。それはほとんどのハーブが魅力的で育てやすく、多くがミツバチやチョウを惹きつけるからです。草丈の高いハーブはコテージガーデンの植物と混植され、見る人の目を引きます。実際、このように植えられているのを見ると、これがハーブを植えるべき方法だと思えてきます。タイムのような草丈の低いハーブは砂利の園路の敷石の間で育てることができますし、パティオのポットに植えられてとても素敵なハーブもありますし、もちろんどのハーブもボーダー花壇でよく育ちます。

 あるいは、広いスペースがあるようなら、パルテールのようなフォーマルな庭園でそれぞれを別々に育てることも可能です。もしそうする場合は、それぞれのハーブの草丈や横への広がりを最初によく調べて、茂りすぎて困るようなものは植えないように気をつけましょう。

 多年草にはちょっとした注意は必要で、少し切り詰める作業を要しますが、いつも収穫していればそれで十分です。一年草はそれに比べてほんの少し面倒はありますが、それでも植える価値があります。2月から3月ごろに少し暖房した温室や、3月にコールドフレーム、あるいは直接外に種をまけば育てるのは容易です。

 時々植え替えるのに使うために、多年草のハーブは苗を増やしておくのが良いでしょう。切り詰める作業を怠ると、ローズマリーやセージなどでは茂りすぎてしまいます。いったんそうなってしまうと、根本的な解決策は掘り上げて新しい苗を植えるしかありません。たいていのハーブは6月に挿し芽をして容易に増やせます。

 ハーブを選ぶ際、おりオーナメンタルな品種は普通の品種と同じくらい台所でも役立つということを覚えておいてください。例えば、斑入りのセージなどボーダーでとても見栄えがしますし、普通のセージと同じような香りもあります。また、黄金色のタイムも普通の緑色のタイムと同じ目的でつかくことができます。




レモンバーム Balm (Melissa officinalis) 


 多年草、高さは30cm

 鶏肉への詰めものや魚料理に使います。若葉を使用しないと、だんだんスジが多くなり香りも失われてきます。

 半日かげで湿った土壌を好みますが、日当たりが悪すぎると葉の色が薄くなります。レモンバームは桶やコンテナでよく育ちます。

 3月に涼しい温室やフレームに種をまくか、4月に外で種をまきます。大きく育ったら、株分けでも増やせます。

 秋には新しい枝を出させて茂みを保つために強く刈り込みます。


スイートバジル Sweet Basil (Ocimum basilicum) 


 一年草で高さは30cm

 卵、鶏肉、パスタ料理などに使います。

 温かい気候を好みますから、寒い地方では一年草として育てます。ブッシュバジルより大きくなります。紫葉の品種 O. b. 'Purpurascens' もあり、これは少し香りは少ないようです。

 3月に少し暖房した温室で種まきトレイかポットに種をまき、コールドフレームで外気に慣らし、遅霜の心配のなくなった5月の終わりから6月ごろに日当たりの良いところに植え付けます。

 水やりをかかさず、花芽が出てきたら摘み取ります。そうしないと成長が悪くなります。秋には短く切り戻してポットに植えて暖房した温室や室内の窓際に置くと、さらに何か月か収穫できます。


ブッシュバジル Bush Basil (Ocimum minimum)


 一年草で高さは20cm

 スイートバジルと同じように栽培して使います。草丈が低く、育てやすいですが、香りは少し弱いようです。


ゲッケイジュ Bay (Laurus nobilis)


 低木

 キャセロール、シチュー、ソースなどに使います。焼肉料理にも用います。生でも乾燥した葉でも良いです。

 この低木は耐寒性がやや弱く、涼しい地方では厳しい寒さの時に室内へ移動できる桶への植栽がベストです。温かい地方では地植えで問題ありません。かなり大きく育ちますが、定期的に刈り込むことで小さく保てます。フォーマルに刈り込んで育てられることも多く、高さは意のままになります。

 大きく育ったゲッケイジュは値段が大変高いですが、6月に挿し穂を取って増やすこともできます(簡単ではありませんが)。うまくいくためには必要以上の数の挿し穂を挿すようにします。

 成長する季節は、ポットが乾いてしまわないように注意し、液肥を週に1回程度施します。葉を取って日なたで乾かして保存できます。




ボリジ Borage (Borago officinalis)


 一年草で、高さは60cm

 夏の飲料に、きゅうりの風味のサラダに、そしてホウレンソウと同じように料理もできます。

 もっとも魅力的なハーブのひとつで、青い花が咲き続けるので装飾的菜園には欠かせないものです。こぼれ種で次の年もまた育ってきますから、一回種をまくだけであとは種まきは必要ありません。もちろんまったく同じ場所に育ってはきませんが、この庭ではそんなことは構いません。苗は若いうちなら、掘り上げて移植するのも簡単です。3月に屋内でポットに種をまくか、あるいは4月に直接外に種をまきます。日なたが大好きです。




チャービル Chervil (Anthriscus cerefolium)


 一年草で、高さは30cm

 サラダ、魚料理、鶏肉料理、卵料理などにそのパセリの風味として使われます。おいしいスープができ、ビネガーにも入れられます。

 チャービルは可愛いカウパセリに似た白い花頭をもつとても素敵な植物です。ただし、乾燥したり成長を阻害されたりするととうが立つ性質があります。ですから半日かげで育てて必要に応じて水をやりましょう。3月から外で種まきをひと月ごとにします。花芽が出たらすぐに摘み取ります。シーズンの最後のころには次の年にまくための種を取るように種をつくらせます。


チャイブ Chives (Allium schoenoprasum) 


 多年草で、高さは30cm

 サラダやスープの付け合せとして、そしてチーズに玉ねぎの風味を軽く加えるのに利用されます。

 ボーダーの一番手前に適した植物で、たくさんの新鮮な葉や丸いピンク色の花球をつけます(一部の花は摘み取っておくと、香りがよくなります)。

 育てやすく、日なたを好みますが気むずかしくはありません。春に球根を掘り上げて、植え付ける前にひとつづつに分けて増やします。種からも育てられ、3月なら少し暖房した温室で、4月なら屋外で種をまきます。

 アリウムにはそのほかにもいくつかの育てる価値のある種類があり、とくにそのオーナメンタルな効果を目的に育てられます。例えばネギ(A. fistulosum)は、草丈が高くなり花の間に植えるととても印象的です。ニラ(A tuberosum)は白い星形の花を夏に咲かせ、葉は強いガーリックの香りがし、サラダに入れたり、チーズ料理に使ったりすると素晴らしいです。




ディル Dill (Anethum graveolens)


 一年草で、高さは90cm

 ディルはすべての部分が利用できるため、広い用途があります。種はスープや魚料理、あるいは甘い料理にさえ香りづけに使われます。また花はピクルスに利用されます。葉はサラダに入れたり、肉や魚料理に使ったり、付け合せにしたりします。

 ディルはまた、素晴らしい黄色の花頭を生み出し、強いアロマの香りがあります。また羽のような葉はとても魅力的です。あらゆる点でディルはなくてはならないものです。

 乾燥した風の少ない日なたを好み、4月から毎月育てるところに直接種をまきます。シーズンの終わりには次の年のために種を取るか、あるいはこぼれ種から育つようにします。フェンネルとの間で他家受粉が起こるため近くには植えないようにします。


フェンネル Fennel (Foeniculum vulgare)


 多年草で、高さは180cm

 その心地よいアニスの実の香りがいろんな料理にさわやかさを加えます。種がもっとも香りは強く、つぶして甘い料理や辛い料理に使われますし、その葉はサラダにしたり魚や肉料理に使われます。

 種は4月にそとに直接まくか、あるいは3月に少し暖房した育苗トレイにまきます。フェンネルは日当たりと肥沃な土壌を好み、5年間ぐらいまで役にたってくれます。毎年こぼれ種から発芽しますから、実生苗も移植して使うことができます。


ガーリック Garlic (Allium sativum)


 一年草で、高さは30cm

 辛味の料理一般やサラダに、そしてパンの香りづけに使われます。

 ガーリック(にんにく)は庭のもっとも日当たりの良いところに植えます。一年草として栽培され、毎年球根をそれぞれの小鱗茎に分けて毎年植え付けます。15cmほどの間隔で浅植えにします。植え付けは秋、10月から11月が最適です。植え忘れたら、早春に植えてもよいですが少し収量は減ります。8月から9月に掘り上げて乾燥して室内につるして保存します。次の年のための小鱗茎をとっておくのを忘れないようにしましょう。


ラベージ Lovage (Levisticum officinale)


 多年草で、高さは270cm

 その葉はスパイシーでトウガラシの風味があり、スープやシチュー、キャセロールなどに利用されます。若い茎は野菜と鶏肉の料理に使用され、種はケーキやビスケット、パンなどにスパイシーな香りづけに使われます。

 ラベージは3月に育苗トレイやポットにまいた種から育てることもできますが、最初は苗を買って育てるのが良いでしょう。また、一個で十分です。とても大きな茂みになりますから、2,3年で掘り上げて株分けしたくなると思います。


ポット・マジョラム Pot marjoram (Origanum onites)


 多年草で、高さは60cm

 このハーブは風味の薄い料理、例えば肉や魚、卵の料理、詰め物、野菜やサラダなどほとんどの種類の料理に使われます。

 いちばん育てやすいマジョラムの種類ですが、香りが弱いようです。小さな淡いピンクか白い花が咲いてボーダー花壇では魅力的な植物で、ほかのマジョラムと同じようにミツバチを集めます。

 マジョラムはどれも日なたと肥沃な土を好みます。3月に屋内で、あるいは4月に屋外で種をまいて育てることもできますが、発芽に時間がかかります。別の方法として、根や茎の挿し穂をとったり、株分けをする方法があります。シーズンの終わりに掘り上げて鉢に入れ、室内で育てます。日当たりが良ければ屋外でもよく育ちます。


スイート・マジョラム Sweet Marjoram (Origanum majorana)


 半耐寒性の多年草で、高さは45cm

 もっともアロマティックで香りのよいマジョラムです。ポット・マジョラムと同じような料理に使えます。育て方も同様です。


オレガノ Oregano (Origanum vulgare)


 多年草で、高さは60cm

 3つのうちでは無骨者で、強くきつい香りがあります。白またはピンクの良い花をつけますが、少しだらしなく伸びる癖があります。育て方や使い方はポット・マジョラムと同じです。


ミント Mint (Mentha rotundifolia)


 多年草で、高さは30cm

 これは最もよく知られたハーブだろうと思います。ラム肉やえんどう豆、ジャガイモなどの香りづけによく使われた歴史がありますが、他の野菜に混ぜてもおいしいですし、冷たい飲み物や冷たいスープの香りつけにも使われます。

 ミントは苗を買って育てますが、とても広がっていきやすいのでポットで育てて広がらないようにします。ポットで育てていても、時々外に広がっていないかよく注意することが必要です。日なたでも日陰でも育てやすく、湿った土壌さえあればたくさん葉が茂げります。

 冬の間も、ハーブの地下茎を培養土の入った箱にいれて台所の窓辺に置いておけば育てることができます。もしもっと増やしたいなら(増やしたくなるとは思えませんが)、地下茎を挿し穂にして増やせます。



パセリ Parsley (Petroselinum crispum)


 一年草で、高さ23cm

 もう一つの人気のハーブで、付け合せに使ったり魚や野菜、スープ、ソースなどの香りづけにも使われます。

 3月に育苗トレイに種をまくか、あるいは直接屋外で種をまいて育てます。発芽に時間がかかるので、きちんと水やりが大切です。種をまく土が乾いている場合は、まく前に十分水をかけます。あとはただ発芽するのを辛抱強く待ち、乾いた気候ならたくさん水やりをするだけです。

 ポットでよく育ち、園路の縁取りにもよく、パルテールやフォーマルガーデンのの区切りにも使えます。また、温室や窓辺でも育てられます。


ローズマリー Rosemary (Rosmarinus officinalis)

多年草で、高さは90~120cm

 この耐寒性の低木は青い花とグレーがかった緑の香りのある葉で、ボーダーではとても端正に見えます。料理に使わなくても、装飾的な植物としてとても植える価値があります。多くの肉料理、特に子羊の肉に使い、野菜や魚とも合い、スープにも使われます。かなり香りが強いので、料理に使うときは注意が必要です。

 ローズマリーは水はけが悪いのを嫌いますから、もし植えるところの土が固いようなら粗い砂をまぜると良いでしょう。種から育てることをできますが時間がかかるので、苗を買って6月に挿し穂をして増やすとよいでしょう。常緑なので一年中葉がありますが、大きくなりすぎないように刈り込んで管理しましょう。


セージ Sage (Salvia officinalis)


 多年草で、高さは60cm

 よく知られた装飾的なハーブで、日なたでよく育ちます。葉色が異なる品種があり、ボーダーに最適の植物です。葉は詰め物によく用いられ、肉やチーズ料理に使ったり、ペーストリーに使ったりします。

 種から育てられますが、挿し穂がとれる苗から育てるのがベストです。6月には根がよく出ます。簡単な方法としては、挿し穂を直接地面に挿しておく方法です。よく日のあたる所に植え、定期的に刈り込んで茂りすぎないようにします。何年に一度か植え替えます。




サマー・セイボリー Summer Savory (Satureia hortensis)


 一年草で、高さは60cm

 ちょっと弱々しい一年草でトウガラシのような香りがあり、ソラマメによく使われ、ソーセージやシチュー、肉料理などに利用されます。

 日なたと水はけの良い土を好みます。3月に室内で、あるいは4月に屋外で種をまいて育てます。15cm間隔になるように間引きます。収量は多くないので、植える数を多めにします。とてもミツバチを惹きつける性質があります。


ウィンター・セイボリー Winter Savory (Satureia montana)


 多年草で、高さは38cm

 サマー・セイボリーと同じような用途に使われますが、こちらは多年草で常緑です。一年中葉が利用できます。8月に屋外に種をまいて育てます。発芽に光が必要なので、種の上に土をかけないでください。6月に挿し穂で増やしたり、株分けで増やすこともできます。比較的寿命が短く、何年毎か新しいものに更新が必要ですから、増やしておく必要があります。

 サマー・セイボリーと同じく、よくミツバチを集めます。


タラゴン Tarragon (Artemisia dracunculus)


 多年草で、高さは60cm

 「ハーブの王様」とも呼ばれ、フレンチ・タラゴンは魚や鶏肉料理、詰め物料理、サラダ、ビネガーやマヨネーズ、肉料理と、いろいろな使い方をされています。ベアルネーズ・ソースやその他のソースに欠かせない香辛料です。言い換えれば、必要不可欠です。

 タラゴンは種から育てるのはむずかしく、苗を買って6月に挿し穂をして増やすようにします。日当たりと水はけの良いところで育て、茂りすぎないように4年毎ぐらいに株分けをします。


タイム Thyme (Thymus vulgaris)


 多年草で、高さは8~30cm

 いくつかの種類のタイムがあり、砂利の園路で使われるような匍匐性のものから、香りのよい立ち性の普通のタイムまであります。何種類かのタイムを植えておくととても見栄えがよく、たくさんのミツバチを惹きつけます。詰め物やソース、スープ、家禽や貝料理などに使われ、特に油っぽい食べ物に合います。レモン・タイムはフルーティーできつい香りが少ないため、これを好む人もいます。

 タイムは日当たりとアルカリ性の土壌を好みますから、必要なら植え付けるときに石灰をまきます。コモン・タイムは種から育てやすく、3月なら屋内で、4月以降で温かい場所なら屋外に種をまきます。ほかのタイムは苗をかって、6月に挿し穂をとって増やすのがよいでしょう。茂りすぎないようにいつも切ってキッチンで使うのが大事で、使いきれない場合は6月に強く刈り込みます。広がりすぎたらスコップで掘り上げます。コンテナでもよく育ちます。