第8章 樹木の果実: 洋ナシ

第8章 樹木の果実  TREE FRUIT



ఔ 洋ナシ  PEARS ఔ




 洋ナシはリンゴにくらべると育てるのがむずかしく、完璧な成果のためにはより高い気温が必要です。暖かい地方ではよく育ちますが、それほど温暖でない地方では南や西に面した壁やフェンスで育てると良いでしょう。成長はリンゴより遅く、花は早く咲きますから霜には弱いです。でも、壁やフェンスに植えれば解決できない問題ではありません。ファン仕立てやエスパリエ仕立てが最も良いですが、暖かい庭ではステップオーバー仕立てやコルドン仕立て、ロリポップ仕立ても可能です。これらの注意点を除けば、リンゴと同じように育てられます。その白い花はすぐそこまで春がきていることを知らせてくれるとても歓迎すべき庭の光景となります。



品種 Varieties


 リンゴと同じように洋ナシもしっかり実がつくためには受粉木が必要です。'Conference'という品種は自家受粉でもたくさん実をつけますが形が悪くて、ちゃんと他家受粉したものほど良くはありません。洋ナシは保存期間が短いため、収穫期間を長くするためには品種選びは重要です。
 洋ナシはリンゴより花の咲く時期が早いので、その地域での情報が特に重要で、遅く花が咲く品種を選ぶ必要があるかも知れません。


早く花が咲く品種 Early-flowering varieties


'Conference'

 最近では間違いなくもっとも人気のある品種です。収量が多くて、他の品種よりは少し長く貯蔵ができます。縦長の緑色した先細りの形で、次第に黄色く色づきます。良い香りですが、とびぬけてはいません。受粉木がないと、収量は少なくなります。収穫時期は10月中旬から11月末です。

'Williams Bon Chretien'

 古くからの人気の品種で素晴らしい香りがあります。大きくてジューシーな果実で、収穫時期は短くて、9月には収穫が始まります。

'Beth'

 比較的新しい品種で、私の庭ではいつもよく実がなっています。香りや歯触りは'Williams'に似ていて、収穫時期も似ていますが、少しこちらのほうが長持ちするようです。

'Merton Pride'

 これも比較的新しい品種で、細やかな香りがありますが、収量は多くはありません。自家受粉をしないので、育てる場合には受粉のために他の品種も一緒に植える必要があります。9月末に収穫が始まります。



遅く花が咲く品種 Late-flowering varieties


'Gorham'

 香りの良い古くからの品種で、9月中旬から収穫が始まります。早めに収穫して塾させるのがベストです。




'Onwerd'

 素晴らしい香りで収穫量も多い比較的新しい品種です。残念ながら果実はあまり長持ちしません。

'Doyenne du Comice'

 少し耐寒性が弱い品種で、南向きの壁にファン仕立てで育てる必要がありますが、その香りは歯触りは十分にその手間をかけても価値があります。10月から収穫が始まり、11月後半まで続きます。





台木 Rootstocks

 
 洋ナシはマルメロの台木に芽接ぎや接ぎ木されます。もっとも多い台木はQuince Aで、かなり成長は旺盛ですが、リンゴより洋ナシは成長がもともと遅いので、たいていの庭ではちょうど良いでしょう。それほど肥沃でない土壌で使用される台木の一つでもあります。Quince Cという台木はもっと矮性で、小さな木が欲しい人向けです。リンゴの矮性台木と同じく、木がより若い時期から実をつけるようになります。しかし普通はQuince Aを選ぶべきでしょう。


植え付け Planting


 リンゴの時とまったく同じ方法で植え付けます。ファン仕立てをおすすめしますが、もし二本分のスペースがある場合には、3mの間隔をあけましょう。




剪定 Pruning


 エスパリエと同じく、ファン仕立ての苗木もたいていの苗木店で購入可能です。あるいは、一年か二年生の苗木を使って自分で一から仕立てていくこともできます。洋ナシは短い間隔で枝を出す性質があるので、仕立てるのに大変都合が良いのです。
 ですから、モモやネクタリンに必要な複雑な方法ではなく、簡単な方法をいつも私は使っています。植え付けてすぐに冬の間に主幹を6個の芽を残して短く切る詰めます。そして両側に3本か4本の長い棒を水平に張ったワイヤーにファン型に固定します。次の夏に枝が伸びてきたら棒に誘引してファン仕立てにします。年々枝が伸びてきますが、棒の先端まで伸ばします。
 夏の剪定はリンゴより少し早めで、だいたい8月か9月の初めです。それぞれの枝を一本のコルドンとして扱って、側枝を7.5cmに、側枝から出た枝は2.5cmに剪定します。
 オーナメンタルな計画ではファン仕立ての洋ナシはとても役立ちます。冬でもファン仕立ての形がとても美しく見えます。春にはもちろん白い花が咲き、幸運なら秋に魅力的な果実を楽しめます。


霜からの防御 Frost Protection


 イギリス国内の寒い地方では洋ナシの花を霜から守ることが絶対に必要なことです。もしあなたの庭に南に面した壁があれば幸運で、日中に太陽の熱を吸収して夜に放出するので問題は深刻とはならないでしょうが、そうだとしても多少の注意はやはり必要でしょう。
 もっとも簡単な方法は透明なポリエチレンのシートを少なくとも240cmの長さで二本の丈夫な棒にステープルで固定して使う方法でしょう。早春の頃にはシートを棒に巻きつけて木の横に立てかけておきます。天気予報に注意しておき、霜のおそれがあればポリエチレンシートを棒から伸ばして木の両側に棒を立てかけてシートで覆うのです。これでほとんどの場合は大丈夫です。




収穫と貯蔵 Harvesting and storing


 洋ナシを食べるのにベストな状態にもってくるのは簡単なことではなく、試行錯誤と経験が必要になります。洋ナシが軟らかくてジューシーなのが好きならば、収穫の時期と食べる時期を正確に判断しなくてはなりません。早い時期に熟する品種の'Williams'や'Merton Pride'は十分熟するちょっと前のまだ緑色で硬い時期にもぐ必要があります。家の中で一番冷えたところの棚にそれを置いておきます。もちろん霜から守る必要がありますが、その時期は果実を傷めるほどのひどい霜がおりることはあまりありません。
 一か月も二か月も完全に貯蔵できるかのように見えることもありますが、欺かれてはいけません。外見は問題ないように見えても、内部は軟らかくグチャグチャになっていることがよくあります。ですから2週間以上は冷所には置かずに室温での最後の追熟をします。二、三日でもっともジューシーな状態になります。ですから2週間ほどかけて少しずつ続けて室内に入れます。
 遅く成熟する品種もほとんど同じように保存しますが、完全に熟してから収穫する点が異なります。しょっちゅう実の状態を観察して、何個かの実を少し持ち上げてみて調べます。もしそっとひねるだけで木からもげてくるようなら、収穫の時期です。
 洋ナシは新鮮な状態で長持ちはしませんが、冷凍が可能ですし、瓶詰めにもとても適していることを覚えておきましょう。