第5章 装飾的植物: 挿し穂で増やす

第5章 装飾的植物  DECORATIVE PLANTS



ఔ 挿し穂で増やす PROPAGATION BY CUTTINGS ఔ




 植物の枝を切ってポットにさしておくだけで新しい植物ができるなんてとても信じられないともしあなたが思うとすれば、私も同様なのです。30年余りガーデニングをしていても、挿し芽をするときに信じられない気持ちがあります。根が出てくるのをみると今でも驚きます。実に面白い現象です。

 しかし、きちんとやれば根がでてくるのです。そして、あなたの庭で植物を増やすのには大変安上がりな方法です。もしお友達やご近所が魅力的な植物を持っていたら、1つか2つ挿し穂をもられないか聞いてみましょう。もし彼らがガーデナーならきっと喜ぶことでしょう。

 装飾的菜園では寒さに弱い多年草は植栽計画の重要な要素で、挿し穂の方法をマスターすることは欠かせません。さもないと毎年春に新しい苗を買うことになり、不便ですし、お金もかかり、何より楽しくありません。さらに、うまくいきそうにないという悲観的な心配は誰でもあるのですが、実際には挿し穂によって増やすのは少しもむずかしくないのです。


寒さに弱い多年草の挿し穂 Cuttings of tender perennials


 ゼラニウム(ペラルゴニウム)や半耐寒性のフクシア、菊、サルビア、ダリア、コスモス、などがこれに含まれます(寒さに弱い多年草の項を参照)。これらはいずれも5月末か6月の初めに庭に植え、初霜が降りる11月に温室に移すものです。挿し穂ができるように再び成長を始める春まで温室に置かれます。

 ダリアやコスモス、そして一部のサルビアの挿し穂は冬を越した親の植物から春に採取するのが最良です。しかし、フクシア、ゼラニウム、菊などは夏の終わりや秋に挿し穂を取って温室で育てます。そして翌春に冬を越した親の植物や秋に挿し芽をした植物からまた挿し穂が採取できるのです。いくつかの例外を除けば、挿し芽の方法はすべて同じです。

 健康な脇芽を見つけて、葉の出ている所のすぐ上で切り取って、長さを7.5 cmほどにします。鋭利なナイフを使って、一番下の葉の出ている節のすぐ下で切り、一番下の葉は取り除きます。ゼラニウムはそれぞれの葉柄の下に小さな葉のような形の托葉があるので、これも一緒に取り除いておきます。

 何枚ぐらいの葉を残しておいてよいかはちょっとむずかしい所です。これは経験で学んでいくことですが、大雑把にいえばフクシアのような小さな葉なら4枚、ゼラニウムのような大きな葉では2枚か3枚といったところでしょう。

 多くの植物では発根促進剤の粉末を挿し芽の基部につけると少し良いようですが、つけすぎないように注意します。驚くことに、つけすぎると発根を阻害するようです。挿し芽の基部に発根促進剤をつけて、余分は振り落とします。そして同量のピート(できればその代用のもの)と園芸用のバーミキュライト(断熱用のバーミキュライトは細かすぎるので水はけが悪く不向きですので、ガーデンセンターの園芸用を使用します)を混合したコンポストに挿します。ポットに5 cmの間隔で挿して、プロパゲーターの中に入れます。この中では温度が約20度ほどに暖められ、理想的です。およそ1週間から2週間で根が出てきます。

 例外が2つあり、いずれもゼラニウムに関することです。まず、発根促進剤は不要です。もともとゼラニウムの葉の付け根には発根のホルモンがあるので、発根促進剤をつけるとかえって悪いようです。もう1点は過度に湿度が上がるのを嫌うことです。ですからフタで覆わないようにします。しかし、少し暖めてやるのは発根を促します。

 いったん根が出てきて見た目に元気が出てきたら、種まき用のコンポストをいれた3インチのポットに植え付けます。



低木の挿し穂 Cuttings of shrubs


 多くの低木の挿し穂の簡単な方法は6月に緑枝挿し穂を採取する方法です。たくさんの種類の植物でうまくいっていますので、まずあらゆる植物で試してみるとよいと思います。

 挿し穂を取る時には、その年に伸びた若くて元気な枝をさがします。葉の出ている節のすぐ上で切って採取し、長さは7.5~10 cmぐらいに切ります。もしお友達の庭からいただく場合には、裏側の見えない場所から取るようにし、少なくとも同じ植物から6本は取るようにします。取った挿し穂は作業をするまではビニール袋に入れて日が当たらないようにしておきます。

 家に帰ったら多年草の挿し穂の作り方と同じように、節のすぐ下でカットして下のほうの葉を取り除きます。発根促進剤の粉に浸して余分の粉は振り落とし、同量のピートの代用品とバーミキュライトを混ぜたコンポストを入れたポットかトレイに挿します。

 そして薄いビニールを用意します。クリーニングに出したスーツが入ってくる袋など理想的です。挿し穂の先端を抑えるようにビニールで覆い、下にたくし込んで密閉します。

 そのあと挿し穂を挿した容器をコールドフレームに入れれば、いよいよ楽しみの始まりです。日を当てて光合成をさせるとともに、当てすぎて萎れさせないようにうまくバランスをとっていきます。簡単ではありませんが、世話をする価値があります。なぜならそれが成功の鍵を握っているからです。

 コールドフレームを遮光ネットで覆ってやります。ガーデンセンターで売っています。毎朝天気予報を確認して、とても天気がよさそうなら遮光ネットを二重にかけます。お天気がそうでもなければネットは一重にします。日が照らない日はネットはかけないようにします。もし毎日の調整が面倒に感じるなら、一重のネットをかけてあとはうまくいくように祈りましょう。ただし、その場合は結果も今一つと思ってください。

 それぞれの挿し穂を別々に植え替えることができるぐらい挿し穂が根付くのには6週間から8週間ぐらいかかります。

 コニファー類の挿し穂の同じようにできますが、違うのは枝の基部に傷をつけると役に立つことです。葉を綺麗に切るのではなく、引きはがすようにすればうまくできます。




休眠枝挿し Hardwood cuttings


 ある種の低木は休眠枝挿しで容易に根付くので、込み入った方法で悩む必要はありません。秋にその年に延びた枝を切って、23cmほどの長さにします。挿し穂の上は節のすぐ上で切り、下は節のすぐ下で切ります。庭の片隅に溝を掘って挿し穂が地上に7.5cmほど出るように土をかぶせます。もし土質が粘土質の場合は、溝の底の部分に砂を敷きます。土の表面を靴で踏んで挿し穂を安定させれば終了です。次の年の終わりごろには根付いて移植できるようになるでしょう。この方法ができる低木の種類は、柳、花スグリ、レンギョウ、フサフジウツギ、ミズキ、バイカウツギ、などです。




その他の草木を増やす方法 Another way with shrubs and herbaceous plants


 草花や一部の低木を増やす他の方法には、育苗業者が行っている方法があります。枝から挿し穂にできる部分があれば、どの時期にも採取します。通常は4月から10月までです。。

 寒さに弱い多年草の挿し穂の取り方とまったく同じ方法で採取し、同じ温度で育苗器にいれます。ガーデンセンターで売られている灌水マットを育苗器の底に敷いて湿度を少し高くするのがお勧めです。灌水マットの代わりにキッチンペーパーを厚めに重ねてもよいでしょう。植物の種類や季節によりますが、3週間以上たって挿し穂は根が出てきます。


株分け Division


 多くの草花は根の部分を分ける株分けで増やすことができます。ただし株分けは根が分散してかたまりを作る植物に限られ、茎が1本で直根をもつ植物ではできません。

 もっとも適した時期は秋または春です。掘り上げていくつかに分けるだけです。多くの草花は中央部からまわりに広がっていきますから、一番外側の部分がもっとも新しくてもっとも元気な部分ですから、外側の部分を主に植えつけ、中央部は廃棄します。

 もし株が硬くて分けにくいときには、ガーデンフォークをもう1本借りて2本のガーデンフォークを株の中央部に反対向きにして差し込み、間をこじ開けるようにして株を分けます。

 多肉質の根をもつ植物、たとえばギボウシなどは、春まで待ったほうがよいでしょう。成長を初めてすぐの時期にはどこに芽があるかが分かりやすいからです。芽の間で鋭い移植ごてや大きなナイフを使って切り分けます。

 植えつける前には、植える場所にコンポストや肥料などを混ぜ込んで土壌を改良しておきます。そして、特に春は新しく植えた株には水やりが必要かもしれないことを忘れないようにしましょう。