第10章 害虫、雑草、病気の管理: 特殊な害虫対策

第10章 害虫、雑草、病気の管理 CONTROL OF PESTS, WEEDS AND DISEASES


ఔ 特殊な害虫対策 SPECIAL METHODS OF PEST CONTROL ఔ



 特定の害虫への対策として有機栽培のガーデナーによって開発されてきた特別な方法がいくつかあります。その多くは大変効果的ですが、何とか抑制する程度のものもあります。いずれの方法もある特定の害虫のみを対象にしており他の生物には害がありませんから、是非試してみる価値があります。


ナメクジ Slugs

 ナメクジ退治の方法は何十も試してみましたし、何百ものおはこの対策法を送ってもらって、そのほとんどを試してみました。そのどれも完璧な対策とはなりませんでしたが、いくつかの方法はかなり効果があってちょっと手間がかかってもやってみる価値のあるものでした。すでに早春に土の表面を耕すことで卵を表面に出して鳥に食べてもらう方法は述べました。

 捕まえて回るのは終わりのない方法ですが、特に被害を受けやすい若い苗を守るのには今でもとても効果的な方法です。 いちばん便利な方法は、作物の近くの地面に何枚か板を置いておく方法です。毎朝板をひっくり返すと隠れているナメクジがたくさん見つかります。捕まえてから、ロウのビンに入れたり、どこか遠く離れた場所で他所の植物に害にならないところに持っていくかします。

  すすで植物のまわりをマルチングするのも良い防御法ですが、だんだんセントラルヒーティングが普及するにつれて手にはいりにくくなっています。石灰も有効ですが土壌のpHに影響するのでお勧めできません。粗い松の樹皮も抑止効果があることを発見しています。

 特定の若い苗を守るのにプラスチックのビンや、大きな植物にはキャロットフライで紹介したプラスチックの板を接着してつくる囲いはよい方法です。プラスチックを十分土のなかに押し込んで、ナメクジがもぐりこめないようにします。


シンクイムシ Codling Moth

 シンクイムシはリンゴをかじったときに見つけるイモムシです。決して愉快な感触ではありません。メスの成虫のシンクイガは5月か6月に卵を産み付けますので、対策はその前に始めないといけません。果実生産農家はシンクイムシ捕獲器を使って虫の発生を感知して薬剤散布をします。この捕獲器はガーデナーでも使えますし、おおよそ8割のシンクイガを捕まえることができます。

 捕獲器はプラスチックダンボールの屋根のついた粘着性のシートです。繁殖の際にオスを惹きつける誘引物質の入ったカプセルがシートの上に設置されています。この物質はフェロモンと呼ばれます。オスのシンクイガはこのフェロモンを嗅ぎつけて集まってきて粘着シートにくっつきます。卵を産むのは確かにメスですが、オスを捕獲してしまうと交尾を防止できるので、当然卵はできません。



ハリガネムシ Wireworms

 ハリガネムシは多くの植物の根を食べ、またジャガイモに隠れ家の穴を開けて台無しにします。これを捕まえるには、細い棒の先にジャガイモや根菜の切れ端を刺して、作物の近くの土に埋めます。ハリガネムシはこれに穴を開けて入るので、その棒をときどき掘り出して虫が入った野菜を取り除きます。この方法では完全には駆除できませんが、問題を確かに減らしてはくれます。

  耕したばかりの土地がハリガネムシが最悪となりやすく、とくにずっと草地だったところが最悪です。ハリガネムシは草の根が好きで、わなの餌としても使えます。被害を受けやすい野菜、例えばジャガイモ、を植えつけるときにその両側にトウモロコシの種をまきます。親しい農家からもらったり、ペットショップで買ったりして種は手に入れます。ハリガネムシはジャガイモよりトウモロコシの根のほうが好きで集まりますから、トウモロコシを引き抜いて燃やしてしまえばよいのです。これもやはり100%の防止はできませんが、耕作を始めると数は減らせますから役立ちます。


ハサミムシ Earwigs

 ハサミムシもかなりの被害を及ぼす可能性があります。特に花芽をやられると花が変形してしまいます。ダリアや菊が特に被害が出やすいですが、被害を受けない花はありません。ハサミムシは夜に食害して昼間は隠れていますから、その習性を利用して退治します。麦わらを詰めた植木鉢を逆さにして作物の近くの地面に刺した棒の上に取り付けます。ハサミムシは夜明けに棒を這い上がって隠れますから、昼間に鉢の中身を水の入ったバケツに入れて退治します。


ノミトビヨロイムシ Flea beetles

 ノミトビヨロイムシは苗、特にキャベツの仲間の苗を食害します。ターニップや白菜ごなどがよく被害を受けます。じゃまをされると空中へ跳ぶ習性があるためノミトビヨロイムシと呼ばれます。この習性を利用して退治します。もし葉っぱに小さな丸い穴をたくさん見つけたらすぐに、グリースを塗った板を作物の2.5cmほど上にかざします。するとこの虫は跳び上がってグリースを塗った板にくっつきます。


コナジラミ Whitefly

 温室の中のコナジラミはこの前の生物学的な害虫対策のところで退治法を紹介しましたが、小規模な発生であれば粘着性の黄色いカードを使って退治できます。コナジラミや多くの他の昆虫が明るい黄色のものに集まってきます。黄色いカードは昔のハエ取り紙のように表面にいったんとまると、くっつけて放しません。しかしコナジラミが取り付いて食害を始めたら、もう黄色い色のカードは忘れていまいます。毎朝、作物をよくゆすってコナジラミを払いのけます。この方法はたいへん有効なので、栽培農家では広く使われています。

 もう一つの退治法は、電気掃除機です。とても騒音がしますが、作物の上で使えばかなりの虫を吸引できます。これも農家の露地栽培でよく使われていますから、役立つ方法だと思います。


根こぶ病 Club root

 アブラナ科の野菜に生じる根こぶ病は効果的な対策がむずかしい病気です。「手指と足指」としても知られるこの病気は、原因となる菌が根を変形、肥大させ、最後には腐敗させてしまいます。作物は大きくならず、しおれてしまいます。根治はできませんが、有効な方法はあり、ある程度の収穫はできます。

 まず、土壌に十分石灰をまいておくようにします。 根こぶ病は土が酸性になると発生しやすいからです。水はけもよくしておきます。しかし、ガーデニングでは通常、これらのことは自動的に行われるのが普通です。

 苗はまずポットで育てます。4号鉢で十分な大きさになって移植できるようになるまで育てます。当然きれいな培養土を使用します。作物は根こぶ病の菌に攻撃されても、きれいな根ができているので、それなりの収穫は見込めます。例外はこの病気に弱いカリフラワーで、ちゃんとした花蕾球が形成されないことがあります。


根腐れ病 Root rots

 いろいろなトマトの根腐れ病が温室の作物に生じて、茎の付け根や根が腐って葉が変色し、時には完全に枯れてしまいます。万一に備えて「ピラント」のような抵抗力のある品種を植えることもできますが、もし病気にかかってしまったら、袋かポットに移して栽培するようにします。ポットでの栽培のためのオーガニックな栽培用バッグや培養土を買うことができますし、中にはピートを含まないものもあります。


アップル・キャンカー Apple canker

 特に古い木に発生し、樹皮に陥凹した変色部として現れ、それが急速に広がって醜い傷をつくります。夏には白いいぼを生じ、冬には赤い子実体ができて、最後には病気が枝の全周に及んで枯れます。病気を見つけたら、健康な部分で枝を切って、切った枝は焼却します。


火傷病 Fireblight

 細菌による果樹などの病気です。葉が焼かれたかのような茶色になるので病名に火傷とついています。治療法はありません。イギリスでは報告の義務がある病気で、樹木は処分しなくてはなりません。