第5章 装飾的植物: 一年草

第5章 装飾的植物  DECORATIVE PLANTS



ఔ 一年草 ANNUALS ఔ




 花壇への草花の苗の植えつけは装飾的菜園では重要な特徴です。低木と多年草がボーダー花壇の骨格をつくり、一時的な一年草、二年草および寒さに弱い多年草が植物の構成に彩りを添えるだけでなく、作物の輪作にも参加するのです。

 すでに説明してきたように、永久的な植物は裸の土の部分がところどころにできるように配置され、そこにはたとえば2月にはレタスを植え、5月にはハツカダイコン、そのあと6月にはダリア苗を植えるといった具合で利用されます。あるいはニオイアラセイトウに10月から6月まで場所を提供し、そのあとズッキーニと交代でもよいでしょう。さらに芽キャベツの下に春の球根植物を植えておき、冬は芽キャベツが茂り、春になると芽キャベツは引き抜いて球根植物を効果的に見せ、花が終わったらパンジーと交代させ、さらに秋の球根植物へと続けるのです。この方法だと庭はいつも新しい表情をみせ、異なる作物の輪作も幅広く行えます。植物による栄養の利用という点で資源を最大限に利用するだけでなく、病害虫も混乱させて彼らに精神的セラピーを必要とさせることにもなるのです。

 この庭で花壇に植えつける植物はよく公園でみられるような植え方とはまったく違う植え方をします。一面のピンクのゼラニウムの手前に明るい赤色のサルビアが兵隊のように列をつくってきちんと並ぶようなフォーマルな構成も魅力的ではありますが、私たちの目的には役には立たないでしょう。ここでは、すべての植栽はインフォーマルなやり方にし、コテージガーデンの原則に沿って行います。植物の高さの変化も大切で、こちらのほうでは草丈の低い植物が後ろにも入り込み、向こうでは草丈の高い植物が前のほうまで広がっているといった具合です。

 今までやったことのない人にはこの植栽法はとてもむずかしく聞こえるかも知れません。しかし、この庭では植える前に机に腰かけて色鉛筆で植栽計画を描くといったことが必要ないところがいい所です。時々花壇の一部に空きができるので、その都度そこに何を植えるかに集中すればよいのです。そのプロセスを続けていきます。

 花壇に植えつけるための植物をポットで育ててパティオにいつも準備しておきたいのはこういう理由によるのです。いつ花壇に空きスペースができても、収穫を目指して野菜苗を植え付けることができますし、もし花壇に色がなくなりだしたら花を咲かせる植物を植えて彩りを復活させることもできます。このやり方は、とても魅力的でしかもやりがいのあるガーデニングの方法なのです。


耐寒性のある一年草 Hardy annuals


 これがいちばん簡単でしかもお金のかからない草花です。何度かの霜には耐えることができるので、特に細かい配慮やお金のかかる暖房などを必要とせず、直接屋外で種まきができます。

 屋外に種をまくのに最も適した時期は3月です。細い棒で土の表面に何本かの浅い溝を、深さ13mmぐらい、間隔を15cmぐらい開けて何本かつくります。できるだけまばらに種を溝にまいていき、少量の土をかけます。レーキの背かあるいは手で土を押さえればそれで作業は終わりです。種をまきたい範囲に振りまいてからレーキでならすか、あるいはふるいを使って土を薄く表面にかけてもよいでしょう。ただ、この方法には大きな欠点があって、種が発芽するときに雑草も発芽してきてどっちがどっちか分からないことがあるからです。もし一列に種をまいておけば、列を作っているものを残して、ほかのものは取り除くことができます。苗が扱いやすい大きさに成長したら、15~23cmぐらいの間隔になるように間引きます。

 もう一つの方法は、プラスチックの育苗トレイに種をまく方法で、一つのセルに一つまみの種をまきます(種からの育苗の項を参照)。コールドフレーム内で容易に発芽するので、加温の必要はありません。それぞれのセルに何本かの苗が育ってきますが、間引きする必要はありません。そのままセルからひとかたまりで取り出して、花壇に植えつけます。種まき用コンポストは土に植えたときに水がしみこみにくいので、植えつけ前に十分に水やりをしておきます。

 植えつける空きスペースが花壇にない場合、数週間は育苗トレイで育ててもよいですが、もし苗が少し黄色くなってきたら3号ポットに植え替えるようにします。

 装飾的菜園に適した耐寒性一年草には以下のような植物があります。


アグロステンマ Agrostemma

 高さ90~120cm、薄いピンク色のトランペット型の花


アンチューサ Anchusa

 高さ23cm、星形の青、ラベンダー色または白色の花。ミツバチの好きな花。


バートニア Bartonia

 高さ60cm、鮮やかな黄金色の大きな花を夏じゅう咲かせます。


キンセンカ Calendula

 高さは品種により30~60cm、マリゴールドはよく知られたコテージガーデンの植物で、黄色やオレンジ色のたくさんの花びらのある花。


コレオプシス Calliopsis

 高さ60cm、黄金色の花びらで花の中心が茶色のキク科の大きな花。


クラーキア Clarkia

 高さ75cmで、赤、ピンクあるいは白の素敵な八重咲きで、昔からの人気の花。


セイヨウヒルガオ Convolvulus minor

 高さ30cn、日なたに最適。青、ピンク、白のたくさんのトランペット型の花をつけます。ハナアブが好きな花。


ハナビシソウ Eschscholzia

 高さ30cm、カリフォルニア・ポピーは赤、ピンク、、オレンジ、黄色および白の花色の花をたくさんつけます。


デルフィニウム Larkspur (Delphinium solida)

 高さは品種により45~90cm、ピンクやラベンダー色、紫や白の花の高い花穂を立ち上げます。


ラバテラ Lavatera

 高さ60cmの茂みをつくり、夏の間じゅうピンクや白の大きなトランペット型の花でおおわれます。


リムナンテス Limnanthes

 高さ15cm、ポーチドエッグ・フラワーとも呼ばれ、中心が明るい黄色で花びらの先が白い花を長期間咲かせます。


ナスタチウム Nastuurtium

 高さ30cm、よく知られた育てやすい植物で、魅力的な葉と赤やオレンジ、黄色などのトランペット型の花を咲かせます。種はケーパーの代用品として使われる。つる性の品種もあります。


ファセリア Phacelia

 高さ23cm、青紫色の花をつけます。


ヒマワリ Sunflower

 高さは品種により120~240cm、黄色い花の大きな花頭をもち、中央部の茶色の平たい部分にはのちに食用の種ができます。すぐれた鳥の好む植物。


スイートピー Sweet Pea

 よく知られたつる性植物で、高木や低木に絡まって、あるいは果樹に、あるいはフェンスの上に適します。花は甘い香りがあり、花色はいろんな色調のパステルカラーから選べます。



半耐寒性の一年草 Half-hardy annuals


 これらはより華やかな花をさかせますが、育てるのがややむずかしくてお金もかかります。温室で育てて、霜の心配がまったくなくなって庭に植えつけるまでコールドフレームで外気に慣れさせておく必要があるのです。

 種まきは1月の終わりに始め、小さな育苗器が必要です。種の袋にはそれぞれ異なる発芽に適した温度が書いてありますが、アマチュアのガーデナーにはそれは現実てきではありません。21度以上といった高い温度を必要とする植物は乾燥用戸棚の中が最適でしょうが、注意が必要です。お湯のタンクのすぐ上は温度が高すぎるので、一段上の棚がよいでしょう。そして毎日発芽のチェックをします。発芽を確認したらすぐに乾燥用戸棚から取り出して温室に移動しなくてはいけません。

 しかし多くの種は18度程度に設定されていることが多い電気式の育苗器でも十分です。多くの種は発芽温度は気まぐれなところがあると言われていますが、ある程度の許容範囲はあります。

 育苗用のコンポストを小さな容器に入れて種をそこにまきます。多くの現代の庭では10cmのポットで育てることができる苗の数はかなり多いでしょう。種のまき方の詳細は「種からの育苗」の項をみてください。

 苗が扱いやすい大きさに育ったら、間隔をあけて育苗トレイに植え替えたり、あるいは7.5cmのポットに植え替えたりできます。植え替えるとコンポストの量が増しますから苗が大きく良い苗に育ちやすくなります。庭に植えつけるまで苗をここで待機させることができます。

 庭への植えつけのおよそ1か月ほど前に、コールドフレームに移して低い外気温に慣れさせる必要があります。

 装飾的菜園に適した半耐寒性一年草には以下のような植物があります。


アゲラタム(カッコウアザミ) Ageratum

 高さ23cm、ボーダーの前列に適した植物で、夏じゅう青いふわふわした花がかたまって咲きます。




キンギョソウ Antirrhinum

 高さは品種により15~90cmのよく知られた育てやすい植物で、変わった花の形の花穂を立ち上げ、花色は白からブロンズ、濃い赤や黄色、ピンクなどいろいろです。


アスター Aster

 高さは品種により23~90cmで、一年草のアスターは夏の終わりに咲くので役に立ちます。花の形は一重で花びらの数の多いキク科の花の形のものから、羽軸のような形の多数の花びらからなる大きな花頭をつくるOstrich Plume(ダチョウの羽)タイプの花まであります。花色は赤、青、ピンク、黄色、白などです。


ベゴニア Begonia

 高さは15~30cmぐらいで、繊維質の根のベゴニアはボーダーの前列では貴重な植物です。花色は赤、ピンク、白などで夏の間ずっと咲き続け、光沢のある肉厚の葉は明るい緑や赤い色で、花をよく引き立てます。




シロタエギク Cineraria maritima

 高さ30cmほどで、銀白色の葉は鮮やかな色の花と良いコントラストをみせます。


コスモス Cosmos

 高さ90cmで、ボーダーの後方にもっとも適した植物のひとつです。シダのような葉は赤やピンク、白などの繊細なダリアのような花をよく引き立てます。これは欠かせません。


ダリア Dahlia

 高さは約60cmの花壇への植えつけ用の背の低いダリアは大きなダリアと似ていますが、毎年種から育てます。花色は多様です。


ナデシコ Dianthus

 高さは15~30cm、一年草のナデシコは多年草のナデシコによく似ています。花色は赤、ピンク、そして白で、とても甘い香りがします。


ガザニア Gazania

 高さは30cm、大きなエキゾチックなキク科の花で、色は赤、ピンク、オレンジ、ブロンズ、そして黄色で、花の中心に向かって円形の模様があります。日あたりの良い場所に植えます。


インパチェンス Impatiens

 高さは15~30cmで、日陰ではいちばんの一年草です。日なたでも日かげでも、ずっと花に覆われます。花色は赤、ピンク、そして白です。


アサガオ Ipomoea

 アサガオは大きなトランペット型の白や青の花を咲かせる華やかなつる性植物です。


ロベリア Lobelia

 高さは約15cm。アリッサムをイストから除外しているのに気付いているかも知れませんが、ほかの一年草より早く終わってしまうからです。ですから、代わりに白いロベリアを使います。この素晴らしい縁用の植物はシーズンじゅう花で覆われます。花は明るい青や濃い青、白、そして白い目をもつ青色です。赤やピンクは私は好みではありませんが、もちろん選べます。




フレンチ・マリーゴールド French Marigold

 高さは15~30cmで、ひとまとめに植えるとこの華やかな植物はこのタイプの庭にはちょっと目立ちすぎるかも知れません。しかし、背の高い植物、野菜などの下に少し植える分には効果的です。花色は黄色、オレンジ、あるいはブロンズ色です。


ミゾホオズキ Mimulus

 高さは15~30cm、日かげに向いた有用な一年草で、斑点のある目立つ黄色やオレンジ、赤やピンクの花をつけます。


ネメシア Nemesia

 高さ23~30cm、直立した茂みをつくる植物でいろんな色の花で覆われます。色が混ざるととてもきれいで、ペルシャ絨毯のようです。


ニコチアナ Nicotiana

 高さ30cmほどで、一年草の中でも特に素晴らしいひとつです。Nicotiana alata (ハナタバコ) は90cmほどになり、夏じゅうたくさんの白いトランペット形の花をつけます。花色は涼しげな緑、白、黄色や赤などです。大きくならずにコンパクトなものもあります。


ペチュニア Petunia

 高さは30~45cmで、もっとも華やかな夏の花壇用の一年草かもしれません。一部の品種は雨に弱い可能性があります。コンテナやバスケットに最適だと思っています。たくさんの花色の大きなトランペット形の花を咲かせます。この種類の庭では、あまり派手にならないように注意するのがよいでしょう。


ポピー Poppy

 高さ30~60cm。ポピーはパステル色の本当にシルクのような可愛らしい花を咲かせます。もっとも効果的にするには5株以上を一緒に植えます。'Summer Breeze'という品種は特に素晴らしいです。




ルドベキア Rudbeckia

 高さは60cm。耐寒性のルドベキアとよく似ていて、暖かい感じの黄色や赤さび色の素晴らしいキク科の花を咲かせます。ボーダーの中ほどに最適です。


マリーゴールド Tagetes

 高さ23~38cmで、フレンチ・マリーゴールドに似ていますが、より繊細で落ち着いた感じです。トウモロコシの下でとても素晴らしく見えます。




バーベナ Verbena

 高さ15~30cmで、大変花の数が多い植物です。赤やピンク、ブルーや白の大きな花頭をつくります。ほとんどの品種にはそれぞれの花には中央が白い「目」がみられます。