第5章 装飾的植物: 樹木

第5章 装飾的植物  DECORATIVE PLANTS



ఔ 樹木 TREES ఔ




 庭をつくる際には、まず最初に樹木を選んで植えましょう。樹木は日陰をつくり競争を生じるので、ほかの植物への影響があることを念頭に置く必要がありますが、だからといって樹木を植えるのを最初からあきらめたりしないでください。日陰を作っても問題ない場所ならいつでも植えられます。よく花が咲き、葉が美しい植木はたくさんありますし、日陰でもよく育つ野菜や果樹もあります。ただし、庭全体を日陰にするのは明らかに好ましくありません。たいていの庭は樹木は2,3本で充分です。選ぶ際はじゅうぶん注意して、ほかの植物をすっかりダメにしてしまうような巨木になるものは避けてください。

 装飾的菜園での樹種の選定は、普通の伝統的なガーデンとは少し違う点があります。うまく選べば2つ、3つの異なる働きを期待できます。いちばんよい例が野生のリンゴのMalus 'Golden Hornet' です。春には花がきれいで、秋には明るい黄色のリンゴの実が美しく、さらに実をつかってワインやジェリーを作ることもできるのです。鳥たちにも果実はごちそうで、よその赤いベリーを食べつくした後に食べに来ますし、春には他の多くの品種のリンゴの受粉にも役に立ち、これ以上臨むことがないくらい役立ってくれます。

 ですから樹種はまず視覚的な印象で決めるべきです。葉や花、樹皮、そして果実の色です。次に重要なのは野生の動物を惹きつける性質です。鳥がとまる枝、巣を作る場所、そして餌です。その次は他の樹木の受粉能力、さらに食べられる果実です。



小さな庭にお勧めの樹木


リンゴ属 Malus

野生のリンゴはもっとも美しくてて役立つ、小さな庭にぴったりの樹木のひとつです。品種によって香りはまちまちですが、いずれもワインやゼリーに使えます。鳥の餌にもなりますが、黄色い実の品種はそのまま実を残すのが普通で、できるだけ長い期間にわたって色を楽しみち場合はそういう品種を選びましょう。いずれの品種もおよそ4.5~7.5mまで成長します。

 M. 'Aldenhamensis'という品種は紫色がかった葉で、秋にはブロンズ色になります。濃い赤色の花が咲き、赤紫色の実をつけます。リンゴのよい受粉木です。

 M. floribundaという品種は日本の野生リンゴ(Japanese Crab)とも呼ばれ、深紅色の花芽から白あるいは薄いピンクの花を咲かせます。その実は小さくて赤または黄色です。

 M. 'Golden Hornet'はすでに上で述べています。

 M. 'John Downie'はワインやゼリーに最適の品種です。花は白く、大きな橙色から赤い色の実をつけます。

 M. 'Profusion'は赤い花がびっしりと咲いて、小さな血の赤色の実が大変人気のある品種です。その若葉は銅色がかった深紅色です。




サンザシ属 Crataegus

 装飾的なトゲが小さな庭ではすばらしく見えます。細い枝の先が丸くなっているため巣を作る場所として鳥に好まれます。葉はたくさんのテントウムシを集め、花には虫を集める蜜が出て、果実は鳥には魅力的です。すべての品種が耐寒性であり、空気の汚染や海風にもよく耐えます。高さは4.5~6mほどになります。

 C. laevigata (C. oxyacantha) 'Paul's Scarlet'はダントツで人気のある、明るい緋色の八重咲きの花で、名前が示すように、明るい赤の実をたくさんつけます。'Aurea'は白い花で黄色の実、'Plena'は白の八重咲きで赤い実をつけます。


コトネアスター Cotoneaser

 コトネアスターは普通は灌木ですが、枝を伸ばして魅力的な低めの木に育てることもできます。花は白く、しばしばピンクがかります。秋には赤い実がついて鳥の食糧になります。多くは常緑または半常緑で、厳しい冬にのみ葉を落とします。樹高は4.5~6mです。

 C. frigidusは低い横に広がる木で、冬に大きな房状をなすたくさんの茜色の実をつけます。

 C. watereri はいろんな程度の半常緑で、豊富な赤い実をつけます。




モチノキ属 Ilex

 セイヨウヒイラギはよく知られていて、鳥には餌と営巣の場を提供し、何百万もの昆虫のすみかにもなります。公害による汚染や塩水の飛散にも抵抗性で、完全な耐寒性です。普通は雄の花と雌の花があって別々の木に咲くので、もし実がつくようにしたいときは雄木と雌木の両方を一緒に植えてください。縦横とても大きく成長しますが、刈り込んで低くおさえたり、形をつくったりも容易です。

 I. aquifolium 'J.C. van Tol'は自家受粉性がある優れた品種で、光沢のある濃い緑の葉と持続的につく赤い実が特徴です。ほかの二つの人気のある品種は、'Silver Queen'と'Golden King'で、それぞれ葉が銀色あるいは金色に縁どられています。ただ、'King'は雌木で'Queen'が雄木なのは注意が必要です。


ナナカマド Sorbus

 この仲間の木にはイギリス原産のナナカマド(S. aucuparia)を含みます。これらの種類の木は鳥の餌を提供し、昆虫を集めます。多くが春に白い花を咲かせ、そのあとに房状に実をつけます。きれいに紅葉をするものもあります。樹高は4.5~10mです。

 S. aucuparia 'Sheerwater Seedling'は低いが勢いのある木で、大きな房状に赤橙色の実をつけます。'Xanthocarpa'は琥珀色の実をつけます。

 S. cashmirianaは5月にピンクの花をつけ、真っ白な房状の実をつける、すばらしい品種です。

 S. commixtaは秋に赤から橙色の実をつけ、実に豊かな紅葉で区別されます。

 S. domesticaは地元原産のナナカマドで、リンゴや時には西洋ナシの形をした実をつけ、実は食用になり、食べているうちにだんだん好きになるような味です。

 S. 'Joseph Rock'は、赤、銅色、紫色の葉に明るい黄色の実がついて、秋はとても素晴らしい品種です。

 S. vilmoriniiは秋の葉色が素晴らしく、実は最初の赤色から次第にピンク、そして白に色を変えます。




アマランシア・ラマルキー Amelanchier lamarckii

 酸性土を好むといわれていますが、アルカリ土でもよく育っているのを見たことがあります。若葉は銅色がかった赤で、細い花びらの白い雲のような花のよい背景となり、昆虫にとっては良い蜜のありかです。秋には日当たりがよいと葉は赤くなり、日陰では黄色に変わります。樹高は4.5~6mです。


カバノキ属 Betula

 カバは庭に森のような効果を生み、細くてしだれる枝と細い葉で優雅な光景となる。銀色がかった白からシナモン色までその樹皮の色ゆえによく栽培されています。樹高は7.5~12mほどです。虫をよく惹きつけ、多くのガを含めて200種類の昆虫に住処を提供します。カバの茂みを鳥は好み、シジュウカラやマヒワなどの鳥はその花穂を食べます。

 B. utilisはシナモンブラウンから輝く白色の樹皮を持つ。茶色い樹皮の若木も成長するにつれて白い樹皮に変わっていきます。

 B. JaquemontiiはB. utilisの一種と考える専門家もいる。確かなことは、その樹皮は白く、特に冬はとても目立つことです。


ヤナギ属 Salix

 ヤナギの多くはふつうの庭には大きくなりすぎますが、それほど大きくならないものもあり、強く剪定することで冬に目立つ樹皮の色となるものもあります。260種もの昆虫をささえ、昆虫は鳥を呼び集めます。その花穂は春にあなたを大いに喜ばせてくれます。

 S. caprea 'Pendula'はキルマーノック・ヤナギとも言い、春に明るい黄色の花穂をつける魅力的な小さなシダレヤナギです。

 S. alba 'Britzensis'(Chermesinaとして時々売られています)は緋色のヤナギと呼ばれ、2年に一回の強剪定をすると冬に鮮やかな赤い枝を生じます。'Vitellina'は金色のヤナギと呼ばれ、黄色い枝色で、強剪定が必要です。

 S. daphnoidesは、紫色のヤナギと呼ばれます。枝が紫色で白い花が咲きます。毎年か隔年での剪定が3月末に必要です。


 私が果樹を除外していることに気付かれていることでしょう。もちろん果樹が庭にあるでしょうが、たいていは壁に這わせたり、小道の縁取りにしたり、特殊な形に仕上げたりされますので、第8章で改めて紹介します。


木々の植え付け法

 裸根の苗木は11月から3月までの休眠期に植え付けますが、できればクリスマス前の土がまだ温かくて比較的乾いているうちに植えましょう。鉢植えの苗木はいつでも植え付けられます。

 あらかじめ十分に植え付ける場所の土壌を改良します。深く耕して有機物を入れます。耕していない場所に穴だけ掘って植え付けたりしないようにしないと、周辺の水のたまり場所になって、根腐れしてしまいます。

 根が十分に広げられる大きさか、あるいは鉢より少し広めの穴を掘ります。裸根の苗木では植え付ける前に支柱を立てておきます。鉢植えの苗木は根を痛めないように斜めに支柱を立てます。

 支柱は苗木の高さの1/3を超えないようにします。そうすれば苗木の上の方は風で揺れ、幹を太くし根をしっかり張るように作用します。そして支柱を外してもしっかり自立するようになります。

 苗木のまわりの土に少量の血粉や魚粉、骨粉を加えて穴を埋め戻します。裸根の苗木の場合は根のまわりに隙間なく土が入っているかをよく確かめます。埋め戻しながら土をやさしく踏みつけます。

 最後に苗木を支柱にプラスチック製の固定バンドで固定します。バンドは滑らないように支柱に釘で打ち付けます。もし鉢植えの苗木なら植え付けた後に水やりを必ず行います。特に春や夏は注意が必要で、週に一回は乾いていないかをチェックします。

 植え付けたあとは、木のまわりをよく成熟した厩肥や堆肥でマルチングします。


植え付け後の管理

 すべての樹木は栄養を必要としますが、装飾的菜園では常に植え替えていく花や野菜の肥料が残って十分な栄養となります。しかし、もし芝生に植え付ける場合には毎年2月に骨粉を与えます。

 最初に幹や枝を切り詰めることが必要な場合もあります。樹高の1/3ほど切り詰めて、込み合った枝や弱い枝を剪定します。あとは、年に一回休眠期に枯れ枝や込み合った枝を選定するだけで済みます。

 水やりは、特に1年目はもっとも大切な植え付け後の世話です。毎週チェックして、もし乾いていればまわりにあふれるようにたくさん水をやります。